商売を始める支援から、経営を続けられる仕組みづくりへ
創業することと、経営を続けることは、同じではありません。
自分の商品やサービスをつくり、最初のお客様を見つけ、売上をつくる。
創業時には、そこに意識が集中します。
ところが、事業が動き始めると、それまでとは違う問題が次々に出てきます。
この価格で利益は残るのか。
来月、再来月の資金は足りるのか。
どのお客様に、どの商品を売るべきか。
忙しい中で、何を優先すべきか。
外注、採用、設備投資をしてよいのか。
商品や技術に詳しいことと、経営ができることは、必ずしも同じではありません。
しかし、創業者が経営の基本を体系的に学び、自分の事業について定期的に考える機会は、意外なほど少ないのが実情です。
この課題に向き合うため、私は「小さな会社の経営基盤室」を始めます。
対象は、これから創業する方、創業しておおむね5年程度までの事業者、フリーランス、小規模法人の経営者です。
目指すのは、誰かに答えを教えてもらい続けることではありません。
自分で数字を見て、状況を整理し、次の一手を決められる経営者になることです。
私は、経営を知らないまま起業しました
私は大阪市内の信用金庫で、融資係や事業所渉外を経験しました。
金融機関で働いていたのだから、経営について理解していたのではないかと思われるかもしれません。
しかし、外から会社を見ることと、自分で会社を経営することは、まったく違いました。
信用金庫を退職した後、私は経営について十分に学ばないまま起業し、段ボールトムソン箱の製造販売会社を25年間経営しました。
夢や意欲はありました。
けれど、事業計画も、資金繰りの見通しも、経営者としての判断基準も十分ではありませんでした。
経営を始めてから、資金繰り、人材不足、営業、設備投資など、さまざまな問題に直面しました。
経営者は、最後には自分で決めなければなりません。
ところが、判断するための知識も、相談できる相手も十分に持っていなければ、目の前の問題に対応するだけで精いっぱいになります。
私自身、何度も「もっと早く知っていれば」「あのとき相談できる相手がいれば」と感じました。
この25年間の経験は、決して順調な成功物語ではありません。
だからこそ、経営の苦しさや、数字を見る怖さ、判断を先送りしたくなる気持ちが分かります。
今では、その遠回りも、創業者や小さな会社の経営者を支援するための大切な経験だったと考えています。
8,200件を超える相談から見えてきたこと
会社経営を終えた後、私は滋賀県産業支援プラザで創業支援や経営相談に携わりました。
インキュベーションマネジャーとして、多くの創業者や事業者と面談し、相談者は約1,000者、面談件数は8,200件を超えました。
さまざまな相談を受ける中で、創業期の事業者に共通する課題が見えてきました。
それは、能力や熱意が足りないということではありません。
多くの方は、自分の商品や仕事に誠実に向き合い、懸命に行動しています。
問題は、経営を整理するための「型」を持っていないことです。
売上は見ていても、粗利益を見ていない。
忙しさは感じていても、商品別や顧客別の採算を確認していない。
お金が減ってから、初めて資金繰りを考える。
集客方法を次々に試すが、誰に何を売るのかが定まっていない。
多くの課題を抱え、結局どれも進まない。
これは、経営者としての才能がないからではありません。
毎月立ち止まり、数字と行動を整理する機会がないためです。
創業支援は「始めるところ」で終わってはいけない
創業支援というと、事業計画書の作成、会社設立、融資、補助金などが中心になりがちです。
もちろん、これらは創業時に必要な支援です。
しかし、本当の経営は、開業した後から始まります。
計画どおりに売れない。
予想以上に経費がかかる。
思っていた顧客と、実際に買ってくれる顧客が違う。
仕事が増えたのに、利益も時間も残らない。
こうした現実に合わせて、計画や行動を修正していかなければなりません。
創業時に作った計画書を持っているだけでは、事業は続きません。
必要なのは、計画と現実の違いを確認し、次の行動を決める習慣です。
そのため「小さな会社の経営基盤室」では、立派な資料をつくることよりも、経営の基本動作を身につけることを重視します。
「仕事をする人」から「経営できる人」へ
創業者やフリーランスの多くは、自分の技術や専門性を使って仕事を始めます。
最初は、自分自身が商品であり、営業担当であり、実務担当者です。
ところが、事業を続け、成長させるためには、「仕事をする人」だけではなく、「経営する人」になる必要があります。
経営する人には、次のような基本動作が求められます。
・自社の利益構造を説明できる
・必要な売上と手元資金を把握できる
・誰に何を売るかを明確にできる
・今月取り組むことを3つ以内に絞れる
・数字と現場の変化から、次の行動を決められる
・問題が大きくなる前に、適切な相手へ相談できる
最初から、すべてできる必要はありません。
毎月、自分の事業を振り返り、少しずつ身につけていけばよいのです。
「小さな会社の経営基盤室」は、その練習と実践をする場所です。
毎月の不安を、数字と行動に変える
経営者の不安は、最初は曖昧です。
「このままでよいのだろうか」
「売上が足りない気がする」
「何かしなければならないが、何をすべきか分からない」
曖昧な不安を抱えたままでは、行動に移せません。
そこで、売上、利益、資金、顧客、営業、業務という視点から状況を整理します。
数字を確認し、問題を言葉にし、今やることを決める。
一度に十個の課題を解決しようとするのではなく、次の90日で取り組むことを絞ります。
私たちが掲げる約束は、
「毎月の不安を、数字と行動に変える。」
というものです。
相談を受けて安心するだけではなく、相談後に行動できる状態をつくります。
「社長の参謀室」の廉価版ではありません
パートナーズ株式会社には、既存企業の社長を対象とする「社長の参謀室」という事業があります。
「小さな会社の経営基盤室」は、その安価なお試し版ではありません。
対象と役割が違います。
「社長の参謀室」は、成長、変革、事業承継、新規事業、大型投資など、会社の重要な局面において、社長の経営判断と実行を支えるサービスです。
一方、「小さな会社の経営基盤室」は、創業期の事業者が経営の基本を身につけ、自分で判断できるようになるためのサービスです。
言い換えると、
・小さな会社の経営基盤室は、経営者を育てる
・社長の参謀室は、経営者の重要な判断を支える
という違いがあります。
もちろん、事業が成長し、従業員が増え、大きな投資や新規事業に取り組む段階になれば、より個別性の高い支援が必要になることもあります。
しかし、「社長の参謀室」へ移行してもらうことが、この事業の目的ではありません。
自分で考え、数字を見て、適切に判断できる経営者を増やすこと自体が目的です。
将来の優良顧客を育てるということ
この事業には、将来の優良顧客を育てるという意味もあります。
ただし、ここでいう優良顧客とは、将来、高額なサービスを購入してくれる顧客だけを意味しません。
毎月数字を見る。
決めた行動を実行する。
問題を隠さず、早めに相談する。
必要な専門家を適切に活用する。
支援に対する対価を理解する。
良い支援を他の事業者にも紹介する。
こうした経営習慣を持つ方は、事業を継続し、周囲から信頼される経営者へ成長していきます。
そのような経営者との関係を、創業期から長く築いていきたいと考えています。
事業規模が大きくならなくても、地域で必要とされ、本人や家族が豊かに暮らせる事業を続けていくことも、立派な成功です。
売上の大きさだけではなく、その人らしい事業を持続できることを大切にします。
このような方に参加してほしい
「小さな会社の経営基盤室」は、次のような方を想定しています。
・これから6か月以内に創業する方
・創業して1年から5年程度の方
・副業から独立を考えている方
・フリーランスから法人化を考えている方
・商品やサービスはあるが、売上が安定しない方
・売上はあるのに、お金が残らない方
・値決めや集客を感覚で行っている方
・法人化、採用、外注、設備投資などの判断に迷っている方
・毎日忙しいのに、事業が前進している実感を持てない方
・経営について相談できる相手がいない方
一方で、短期間で売上が急増する方法だけを求める方や、すべての作業を代行してほしい方には向いていません。
この場で大切にしたいのは、自分の事業と向き合い、考え、行動することです。
小さな事業だからこそ、早い段階で土台を整える
創業期は、使えるお金も、人も、時間も限られています。
だからこそ、間違った方向へ大きく投資する前に、経営の土台を整えることが重要です。
固定費を増やしすぎない。
安売りを続けない。
売上だけでなく利益を見る。
資金がなくなる前に相談する。
すべてを自分で抱え込まない。
流行している手法ではなく、自社に合う方法を選ぶ。
これらは地味なことですが、事業を続けるうえでは欠かせません。
派手な成功法則を教える場所ではなく、長く経営を続けるための土台を一緒につくる場所にしたいと考えています。
私自身の遠回りを、これから始める人の近道に
私は、信用金庫、25年間の会社経営、そして8,200件を超える経営相談という三つの立場を経験してきました。
金融機関が事業者をどのように見るのか。
経営者が現場で何に苦しむのか。
支援する側が、どのように課題を整理すべきか。
これらの経験を、創業期の方が使える形にして届けます。
経営者として遠回りした経験があるからこそ、同じ苦しみを避けるために伝えられることがあります。
そして、多くの相談に向き合ってきたからこそ、問題が表面化する前に確認すべきことがあります。
創業は、事業の始まりです。
しかし、本当に大切なのは、その事業を続け、自分と家族、お客様、地域にとって価値あるものに育てていくことです。
商売を始める支援から、経営を続けられる仕組みづくりへ。
「小さな会社の経営基盤室」を、創業者が安心して経営を学び、実践できる場所に育てていきます。
ご相談について
まずは、現在の売上、利益、資金、顧客、営業、業務を整理する「経営基盤チェック」から始めます。
自社の課題がまだ言葉になっていない方も構いません。
「何となく不安だ」という状態から、何を確認し、何に取り組むべきかを一緒に整理します。
詳細、お問い合わせは「小さな会社の経営基盤室」の案内ページをご覧ください。


